「サルでも描けるまんが教室 (著:相原コージ・竹熊健太郎)」を読む。
読みました。リミット一杯の一撃が次々と飛び出しては、読者を殴りつけるセンスが素晴らしい。
あらゆるジャンルにマウントをとって、容赦なく拳を打ち下ろす闘争本能を作者たちはどこで培ったのでしょう。
日本橋ヨヲコが「G戦場ヘブンズドア」のあとがきの中で「漫画を書きたいなら、サルまん読んだほうがいい」と言っていた理由がよく分かります。
以下、気に入った箇所の感想などを羅列。
- 池上遼一ロックオンの件について。
- 「アニメ絵。」→「内容はないよーーー!!!」→「イヤボーンの法則」までの完成された流れ。「ウケるエスパーまんがの描き方」
- 恐らく、集大成中の集大成が発揮された部分。
- シニカルな提示→大上段にふざけた説明→隙を縫うかのように勢いギャグをねじこむ→その余熱で場を暖めたら、極め付きのオチを持ってくる。
- サルまんの枠組みのすべてがここにあるといっても過言ではない。
- 幼年マンガの売り方。
- 「幼年向けはまず、お母さんに売れなくてはいけないのだ」圧倒的に正しい指摘。
- 今となってはこれを聞いて平成ライダーを思い出さないひとはいないと思います。
- 作中作「とんち番長」。
- 白とんちと黒とんちの歴史については、不覚にも感じ入ってしまいました。陰謀論大好き。ああいうハッタリに弱いんですよ。
- ラスボスの能力の「説明になっていない説明、理屈じゃない理屈」は、まるで最近のライトノベルによく見られる「観念先行型」の特殊能力を先取りしたかのような飛躍した論理。
- 人、それを「ヘリクツ」と言います。もっとも、この話の通じなさもまた魅力的ではありますが。
- 最終回、完! ……しかしっっ!
- 一番、笑いました。
- ……色々あったんだろうなあ。
- 毒電波。
- ギャグ漫画家の末路というか、「なにもこんなところまでトレースしなくても…」と思わないでもない展開。秋山瑞人の作品を読んでるような気分でした。
やっぱり一つのモチーフを取り巻く一連の話はぐいぐい引っ張ってくれるなあ。
読むスピードが格段に速かったです。下巻は上巻の二分の一ぐらいで読み終わりました。
最後の「まんが業界が規制強化で失速していったということは逆に、読者は今こそ本当に面白いまんがに飢えている」っていうのは非常に前向きなまとめで好みです。
まあ、その行く末が「サルでも萌えるまんが教室」だと考えると、つくづく「因果な商売だ、出版業界」と思わなくもないですが。
……あ、「ラノベ教室」は参考にさせてもらいます。つまり、「ヤらせてくれそうな女の子」を書けば、売れるってことなんですね。分かりました!