知り合いらとダラダラ話す・一時間目。

 体調もすっかりよくなったので、知り合いに電話する。
「オウ、てめーら、人間のクズども、オレサマの回復祝いに鍋でもするべ、夏らしくスカッと爽やかにキムチ鍋を!」
 という号令を受けた友人どもからは、 
「ざけんな、カス」
「黙れ、チョーシのってんな、サル」
 という竹を割ったような心地よい答が返ってくる。いつものやりとりである。
 

 んで、材料持参のダチに、場所提供のオレ。
「他人の台所は使いにくいからダメなの」
 と、まるで主婦のようなことを言って、手伝わずにリボルテックキンゲにヘンなポーズをとらせて遊ぶ料理下手のダチども。一人せっせと、エサ作りに励むオレ。
 完成。
 汗をだくだく掻きながら、マッコリ片手にキムチ鍋をガツガツ食う。鉄鍋にどっちゃり入った野菜とあらかじめ表面を焼いてある肉に舌鼓。
 ぐっしょりとシャツが汗浸しになる頃には、最後のうどんもマッコリも平らげ終わっている。
 一服ついたら、近くの銭湯に赴き、湯船の中で手足を伸ばす。乾いたシャツに着替えて、それなりにさっぱりとした感じで気化熱と放射冷却の夜道を歩く。
 帰りしな、クーラーを浴びるついでにスーパーによって、鳥ササミと大根、シソの葉を購入。
 ササミは湯通しして氷でキンキンに冷やしてからスライス、秘蔵っ子の生醤油とワサビ、大根のツマとシソを添える。
 ササミ刺しと乾き物を肴に、飲む日本酒は高知・玉の井の「南」純米吟醸で無濾過生。キリっとした辛口が美味い。
 これらをつつきながら、ダラダラ喋る。



オレ(以下A「あのさー、まったくもってどうでもいい話をするんだけど――」
ダチ(以下B「じゃあ、すんな」
ダチ(以下C「むしろ、靖国行って、世界市民万歳!って、イマジィーーン・オールザピーポォって熱唱してこい」
B「イメェーージン、オーズァピーー」
 突如、唄いだすB。イヤな顔をするAとC。
A「うるせえ」
C「うるせえ」
 しかし、Bの熱唱はとどまるところを知らなかった。無視して話すAとC。
A「つーか、なんで靖国? 全然かんけーねーやん」
C「いやー、まあ、単にこないだ、いってきたから」
B「あれ? おまえってそういうシュミのひとだったっけ?」
 ぱたり、と切り替えてBが質問する。
C「そーいうシュミって?」
B「国粋主義者
A「いやいや、流行的にはネット右翼でしょ?」
B「あー、おれ、ネット右翼って言葉嫌いなんだよね。それってカンペキ、アジア左翼的レッテルじゃん。生理的に、韓国嫌いなやつも中国嫌いなやつも、経済的に嫌いなやつも、中韓とかどーでもよいいやつも、なにからなにまで含めて『ネット右翼』って言葉でまとめるなんざ想像力足りてねー証拠だって。単に中韓嫌いな連中と欧米コンプレックス連中とを一緒にするのがムリだって。単に日本が好きなやつだっているだろうし」
A「あいかわらずの過激クンだ」
B「なあなあクンに言われたかねえな。んで、Cクンはなんでヤスクニなんぞに行ったん? やっぱ宗教的な理由?」
C「いやいや、違う違う。単に、出張で時間あったから、話のタネに行っただけ。もしかしたらなくなっちゃうかもしれねーんだろ? だったら、見にいかんともったいない」
A「うわ、ケチくせえ」
B「で、どうだった? やっぱ、こえーひととかいた?」
C「……ハトが一杯いた」
A「ハトかよ。英霊とか戦犯とかそういうのはないのか」
C「いやー、うん、まあ、ねえ。難しいことよく分からんし。それより、美味そうだったね。ハト。白ハトって肉柔らかそうだよな」
 三者三様、爆笑する。
B「あーあー、なんか肉の色がよさそうだよな」
A「捕まえて、食えばよかったのに」
C「日本酒と合わんだろ?」
 日本酒ロックで満たされた杯を持ち上げて、
B「まあ、ハトはなんかワインって感じ」
A「ウサギは赤ワインだから、ハトも赤だな」
B「出た。半可通」
A「ひどい」


 明日に続く