入院中に吾妻ひでおの「失踪日記」「逃亡日記」を読んで、イヤな汗が流れた。

 
 痛めた筋がすげー腫れてきて痛いです。退院とか、もうムリっす。一生、病院で寝たきりで暮らすとかダメですか? 小川一水の「漂った男」みたいな進化を遂げる自信があります。


 ところで病院のなかがあんまり暇なので(打撲と捻挫のちょっと激しいやつ程度のケガなので、女性看護士さんも構ってくれないし)、資料まとめる合間に、TV雑誌とか週刊誌とか読んでたら、「セクシーボイスアンドロボ」がドラマ化されると知る。
 マジで? え? あれ? 連載再開されてたっけ?
 と血が沸き立つような興奮を覚えたので、慌ててネットで調べたら、全然、まったく作者ブログでは、「いつか続きは書くつもり」とビミョーに政治的なニュアンス漂うコメント。脱力。なんだよ、それ。
 

 ツレが来て、差し入れで、ポン貴花田「ラブごめ!」と野上武志の「大和撫子00七」と、松本大洋の「竹光侍」をくれました。
 エロ漫画はキャラ、絵、ストーリー、題材、全てにおいてよほど趣味が合致しないとヌケない畑で育ったので、用途に悩むところですが、「ポン貴花田は相変わらず頭がユルイなー、癒されるなー、でも、こんな同僚いるかよ! こんな同棲生活がありえるかよ! チクショウ、チクショウ!」
 と男泣きするのにもってこいですし、
野上武志はあいかわらず上手いんだか下手なんだかよく分からないなー、そういや『蒼海の世紀』ってまだ終わってなかったんだっけ? ていうか、表紙裏のワダツミってアニメキャプサイトの人じゃん。ははぁ、ネット世間は狭いなー」
 とぼんやり考えるのに良い題材でした。


 んで、「竹光侍」ですが、「あぁー、また松本大洋か。確かに評価されてるし、すごく上手いひとだと思うんだけど、ニガテなんだよなー」と思いながら、ページをめくると、

  
 あれ? ふつーに面白い……。
 おかしいな、僕の中で「松本大洋=なんかよくわかんない漫画家」なのに。
 やっぱり、アレかなー。
 主人公が「一点の曇りもなきブシドー・キル・マニア」なのがキてるのかなー。
 松本大洋ってフィリップ・K・ディックの「ヴァリス神学」のような麻薬中毒的内省世界「ペコ・クロ領域」があって、そこがよく分からなさの源泉なんだけど、
 今回の主人公の、
「ああ、斬りたい。美しいものは、それゆえに知りたい。オレは武士であるために、知るためには斬りたい。真剣で斬ってしまいたい」
 という見事な社会不適格者っぷりは、僕のギザギザハートに直撃しました。素晴らしい。グッときました。
 よって、オススメです。うん。