あたかも嘔吐を催すようにチャンピオンREDを読む。

 すごかった。今月はすごかった。
 生きてて本当によかった。こんな狂気が市販される世の中になるなんて。これからも生きていこう。

 山口貴由先生の間テクスト力が凄まじすぎる。こうして原作に繋がっていくのか。
 しかし、藤木にしても権佐にしても愚直なまでに勝負に真剣すぎて、周囲に理解を得られない、というのが面白い。
 「悪党の悪は強いの悪だ」を地で行く発想というか、マジメに生きるって難しいよね、という悲哀というか。
 そして、そこにつけこむ伊良子。マジメヅラして参上するも、邪心が臭うのがたまらない。ここにきて、もしや隆慶的「能使」批判が出てくるのか。

 今月の狂気その一。知り合いらと真剣に作者が何を企んでるのか討議する。


A:「EATMAN」9巻のラストシーンのあまりの美しさに惹かれて読み始めた気持ちを返して欲しい。
B:いや、これはこれで吉富ワールドで情念が臭ってくる。
C:もう吉富先生が何をしても驚かないよ。
D:吉富昭仁ってハナっからスケベだったけど、そんな彼にとって「今の同性愛事情」って最高の材料だったんじゃないかな? 一般社会みたいな性の抑圧の反動で、そこにものすごい解放がある。だから、これはSFで、ロックだ。
A:それって単に初期衝動の世界なんじゃ・・・もう戻れないなら、困るなあ。「連人」まで引っ張られて狂いそうだし。
C:まあ、でも、この作品ってすごいよね。基本コミカルなのに背景がシリアスだから。異星人に侵略された以後の世界で風俗がどう変わっていくのか? とも見えるし、今後のジェンダー社会がどうスイッチしていくのか? とも見える。で、そのなかで主人公がどう成長していくのかって物語でもある。 
D:そこまで絶賛するなら、センスオブジェンダー賞あげりゃーいいんだよ。
B:まー、なんか得体の知れないリアクションを喚起する作品ではあるよねー。

  • ドスペラード

 今月の狂気その二。
 最後2ページのムリヤリさ加減に一同大爆笑。

B:なにやってるんですか!? 大和田秀樹先生!
A:(笑いがおさまらない模様)
C:これ絶対ラスト2ページ、思い付きだけだよね。なんも考えず筆の走るまんまに突っ込んだ展開だよ。
D:あっれーー? ドスペラードってこうなるはずだったっけ? どこで舵取りおかしくなったんだー?

 今月の狂気そのもの。あまりにチャンピオンREDすぎて何も言えない、そんな作品。
 典型的なジャンプ系ピカレスク読みきりの文法に萌えとメイドとバイオレンスジャックをハイブリッドしたら誕生した。どんな奇形児だよ。

  • オルビム

 やっぱデザインドチルドレンはもう流行らないんだろうなあ、と思った作品。盛り上げどころもあったし、悪くないノリだったんだけど、なんかもう一歩踏み込んで欲しかった。デザインドチルドレンにいった時点で物語パターンがほとんど予想されてしまうのがナア。チャンピオンREDなら、いっそフリークスな方向に走っていたほうがよかったのに、ハンパなところで板垣恵介の「理」の部分が出てしまったというか。バキでもしばしば、ヘンに整合性をとろうとしてかえってワケわかんなくなって、グダグダになるけど、この作品の場合、最初の主人公紹介で足を引っ張ってしまったような。

 帰る日を間違って、仕事がヤバかったのこうの言ったそばからHDDレコーダーの予約の心配を(しかも、事前に対処済み)する姿がステキすぎる。