劇場版ワンピース オマツリ男爵と秘密の島

  • 感想

 全編通して見ると明らかに駄作だけど、パート別、あるいは作画別に見ると怪作。

  • 細田守作品はすごいすごいという評判を目にする機会が増えたので、DVDを借りてみました。
  • webアニメスタイルでのインタビューを見てネットで色々前情報を集めてからの視聴だったので、若干バイアスかかっている部分があるのですが、カメラワークやら作画やらがえげつないです。押井守が背景で語る映像作家だとしたら、細田守は人物で語る映像作家です。
  • 徹底した重心の意識というんですかね。人物の動きに神がかった説得力があります。
  • プロダクションIGなどの作品に見られるだら〓っとした背中を基幹に語る人物とはまた違う、腰の後ろ、尻の上辺りに人物の動きの基幹を置いているのかな、と思わされるカットが多かったです。腰を落として、ぐっと踏ん張っているというか。
  • とりあえず前半部分が異常におもしろいです。
    • とにかく動きまくる。ワクワクする。
    • しかし、これは作品全体としては異端的なおもしろさ。なんというか「こだわり」の多くが技法に向かっていて、テーマにはほとんど関心を払っていないように思えました。
    • この辺りに押井守との差異を強く感じます。ジブリに嫌われた婉曲的な理由なんだろうか。
  • 後半は残念なことに、味方側のゲストキャラがとにかく動かないので、おもしろくないです。
    • 脚本がかなりとっちらかっている状態。前半の「お祭り騒ぎ」の楽しいノリを放棄してしまいます。家族向けにするためにやむをえない軌道修正だったのかもしれませんが。そこのところが非常に残念。特にゲストキャラである「チョビヒゲ」と「お茶の間」を分ける必然を見ている側としては感じなかった。
    • 最初から、「お茶の間」の船長をチョビヒゲにして、男爵に対するレジスタンス活動とかチョビヒゲ流の挨拶とか、そういったダサいことをやる口だけ達者のダメお父さんを描き、ラストでそんなお父さんでも家族のためには必死に頑張れるんだ! として、最終的には父系を回復する、とかやりようは色々あったはず。

 一貫したテーマを打ち出していたら、傑作になっていただろうに。なんだかものすごくもったいない作品でした。