オレ・フィクション・フェスタ(06年)
カテゴリは気分です。年に一回ぐらいしか使わないタグだと思うので、勢いですよ、こんなん。
今年、読んだ/見た/楽しんだフィクション類のなかでも特に印象に残った作品について、本日から一週間に渡り、このカテゴリでひたすら毎日、更新しつづけます。中には既述した感想とかぶることもありますが、ご愛嬌ということで。
以下、レギュレーション
- 対象は今年に入ってから、触ったフィクション。作品の発売日は問題としない。
- 絶対評価で点数をつける。ジャンルとかカテゴリとか知りません。そんなものは平等に価値がありません。
- 以下、採用するオレ基準をある程度、客観的にもフェアになるよう配慮して、記述。
※点数面において演出力が優勢となっているのは、それが他の二つの要素と地続きであり、よくできた作品ほど三態の区別がつきにくくなって、評価において不可分であることが多いため、その際それぞれに加点する意味も込めて設定している。
感想テンプレート
「作品名」 総合点
- 独創性 … 各点
- (コメント)
- 絵ないし文章。および脚本 … 点
- ()
- 演出 … 点
- ()
※絵ないし文章、および脚本は分けると色々めんどいので、今年は一緒くたにします。
- 独創性 … 15点
- (「spirit of wonder」という先行作品がある分、やや抑え目)
- 絵ないし文章、脚本 … 25点
- (暖かみのあるストーリー、じんわり染み入ってくる絵やセリフが好ましい)
- 演出 … 30点
- (作品内の世界に浸らせる力は抜群です。こういう世界に立ち寄ってみたい)
今年、発売された作品の中では、一番好き。
網掛けを多用して輪郭線をぼやかした柔らかいタッチが、風景とキャラクタとに実物感を感じさせて、ものすごくツボに入りました。二巻に入ってからキャラとストーリーがぐんぐんよくなってきていて、出てくるキャラに皆、愛嬌があって和むし、元気になります。一巻のちょっとアンニュイな雰囲気が漂う鶴田謙二テイストから、上手く舵を切ったなー、と思いました。とにかく読んでいて心地よい作品です。
「魔人探偵脳噛ネウロ」 60点
- 独創性 … 30点
- (これに満点をあげずして、何にあげると言うのか。もってけドロボー!)
- 絵ないし文章、脚本 … 10点
- (その、なんといいますが、いろんなパースが異常に狂ってるので……)
- 演出 … 20点
- (そういえば、ジャンプ系マンガってこの分野でハッとさせられることってほとんどないなー)
魔人がうれしいと皆、うれしい。狂人どもが己が因業をぶっちゃけはじめると、全員、大喜び。幸せです。
間違いなく現在の少年マンガ界における異端オブ異端。
ここまでくるとこんな発想をする作者が恐ろしいというよりも、真っ当な社会人のはずである編集者の精神のほうを疑ってしまいます。
これまでの最長編である(はず)の「電人HAL編」が年内にきっちり終わって、年明けからはどんな新展開を持ってくるのか、非常に楽しみです。
「マルドゥック・ヴェロシティ」 80点
- 独創性 … 20点
- (SFの不幸なところは、それがどれだけ目新しいだろうとも、「SFだから」発表された時点で古びたように感じてしまうところだと思います)
- 絵ないし文章、脚本 … 20点
- (全体構成は素晴らしいんだけど、出てくるキャラが時々、ものすごい勢いで混線します。カトル・カールが出てくるたびに何回、ページをめくりかえしたか)
- 演出 … 40点
- (壊れた文章がハードボイルドな雰囲気と合致していたし、ストイックな世界観が「能力チームバトル物」を非常にキレイに換骨奪胎してました。こういうの大好物)
今年を締めくった小説。奇しくも今年は「オルタード・カーボン」からフィクションを開いて、今作品で締めるというハードボイルで始まり、ハードボイルドで終わった年になりました。
ハードボイルドって、あんまり世間からスレすぎると、単なる分裂気味のトラウマキザ男になってしまうんですが、「オルタード〜」の主人公、タケシ・コヴァッチにしても、「マルドゥック〜」のボイルドにしても、その適度なスレ方が素晴らしい。やせがまんの美学というのはやはりいいですね。背中が煤けている漢がこの世で一等、カッコイイです。
「鏡の影」 65点
- 独創性 … 10点
- 絵ないし文章、脚本 … 25点
- (ものすごく不思議な文章。素朴なのに濃密。濃密だと思ったら淡白。めまぐるしく文章のノリが変わるというか、メリハリが際立っていて、そのリズムがツボに入る。一方、脚本がいまいちというか、活劇として読んでいると「戦争の法」もそうだったけど、オチで拍子抜けしてしまう。「え? そこで終わるの?」みたいな。減点にはならないんですけど)
- 演出 … 30点
「天使(と続編の「雲雀」)」「バルタザールの遍歴」「戦争の法」などを読んでいた身としては、佐藤亜紀=ユーモラスなダメ人間が一杯でてくる小説家というイメージがあって、この作品でもやっぱりそのイメージには忠実で、幻想的な雰囲気を漂わせているのに、なぜかキャラがみんなぐったり下向きでテンションローのまま、生臭い話をする辺りがたまりません。
ブッキングから復刊されていたんですが、もしかしたら絶版寸前っぽいので、もし興味をもたれて、まだ買ってない人はお早めに。
明日に続く。