[漫画][小説] 色々と読んだ。

  • 黒い時計の旅

鼻血が出るぐらいおもしろい。暴力とポルノと強烈な語り。語りが暴力であり、暴力が語りでもあり、その語りは暴力は、歴史ですらある。その古川日出夫的な、あまりにも古川的な何事か。
今、「聖家族」を読み進めているんですが、同時期に同じ系統の作品を読んでいることがなにか、こう、腹の底でゴロゴロとうごめくようで実に気持ち悪い。居心地の悪さを覚える。その悪寒のような感覚が、また心地よくもあって、読書の不気味な経験、読み合わせの喜びすら覚えるのが実におもしろい。

  • 満月の夜、モビイ・ディックが

セカチューの人だということで、あえて代表作を外して読む。せかちゅーはまだ読んでない、んだったかな? ミーハーなので、なんとなく読んだような気もするし、でも覚えてないのなら読んでないんだと思います。(読んだ本はだいたい覚えている)

 んで、読んだんですが、びっくりするぐらい読みやすかったです。
この読みやすかったってのは、ほめ言葉だと思うんですが、えー、あの、自分でもほんとに戸惑ってるぐらいに、なんにも残らないというか、全然印象に残らないというか、読み流しているといえば、たいていの本を読み流しているほうなんですが、そのまんま、圧倒的ナチュラルでもって、するすると流れていってしまったのもとても珍しい経験です。

 要素を書き出してみると、村上春樹っぽい言い回しで、村上春樹っぽい一昔前の文学青年というほどにはヒョロくないが、シニカルで世の中斜に構えた主人公がスノッブくさい固有名詞をぶんまわしつつ、ちょっと頭のおかしい女の子に美を見つけて、変なおっさんがチョロチョロしてる。だいたいこんなカンジ。

 あと、作者のいいたいことについては、最後20pぐらいで全部いわれているというか、じゃあ、その前の150p以上はなんだったんだというか、ラストの母親とのしゃべりを眺める限り、自由意志と束縛された世間体?というか雰囲気について語りたいんだろうし、ヒロインの造けいからして、衝動と理性の、「心のバランス」あたりに言及されているので、そのへんがテーマなんだろうけど、じゃあ、そのへん全部語ってしまうラスト以外の150p以上はほんとになんだったんだというか、わかんねえ、読み方がわかんないよ。この人。

アニメ1話みましたよ。原作好きだから。偉い人にはコードギアスをほめる前に、ラインバレルをほめてほしいですよね。

まあ、キャラ設定とか、あのへんはアレだけども。
そもそも昔、「バクライガ」という漫画がありましてですね。アワーズで連載してた、ものすごいズッコケ方をした打ち切り漫画なんですが。その漫画のいろんな設定がね、当時作者のHPに載せられていて、街の設計図とか出てきてもいないキャラの組織図とか、ロボ解説とか、正直、その、正視に耐えない、よくある作者だけが盛り上がってしまっている感じが、実のところ、そんなに嫌いではなかったんですよ。
まったくもってクリティカルじゃない、ことごとく外してしまっているところが、むしろ好ましいとか思ってたんです。
で、その圧倒的なカラブリを放った怪作の後に、これですよ。
原作のなにがいいかというと、見得だけですべてが成立しているところでして、要するに「バクライガ」のこざかしさがない、ストーリーとか設定とかどうでもよくて、「ロボがでかけりゃそれでいい」
 そういう喜びがある。そこが、いっそ潔い。


 で、見たわけですが、主人公がさっそく、初期衝動の世界にさようならしてしまったので、「またルルーシュか」「というか、また谷口吾郎ワールドか」「舞HIMEといい、プラネテスといい、リヴァイアスといい、ガン×ソードといい、おまえはまったくどうしようもない初期衝動を書きたがるな。まるで初期衝動の王様だな」という感想のほかは3Dロボはグリグリ動くな−、レイアウトもちゃんと工夫されていて、全長でかい感じが出てるので、グッドだなー。ぐらい。
 キャラデザはそのうち慣れると思います。ファフナーも慣れたし。

 

知り合いに見せてもらいました。ナウシカmeetsレントンというかレントンmeetsラピュタの空賊というか。具体的にいうと、エウレカセブンMEETSジブリ
クオリティは高いんですが、いまいちノリ切れない。作劇も丁寧で、おもしろいんだけどな。
たぶん、劇中で扱っているモチーフが見ているこっちがビビるほどに宮崎駿だからでしょうか。

  • 大金星

黒田硫黄の短編集ということで、そんなに短編掲載してたのか、と思ったら「みし」が入っていたという。
「みしかよ」
「みしだよ」
知り合いはみしに好意的。
「あのなんだか分からないけど、分からないままにキレイにまとまるところがいいんだよ。まるで台風一過の青空のようなすがすがしさ」
正直、死ねばいいのにと思いました。
収録作の中ではアンヘルの話がステキでした。オチの身も蓋もなさにきゅんときた。