[ノベル血風帖] エクストリーム・辞任劇


「では、辞任をお考えに?」
「ええ、民意に沿うかたちで」
 その瞬間、記録は達成された。後ろで控えていた秘書がシャンパンをあけて、喜びの声をあげた。
「おめでとうございます! 大臣」
すると、齢60の男が言う
「おいおい、私はもう大臣ではないよ」
 こうして、エクストリーム・スポーツ史に新たな名を刻む日本最速の男が誕生したのである。

    • エクストリーム・辞任劇

エクストリーム・辞任劇とは特定の組織における主要ポストにある人物が就任後、どれだけ素早く辞任できるかを競うエクストリーム・スポーツ。全世界で行われており、日本国政府で行われるレースが世界最高峰といわれている。

ルール

当初、プレイヤーの様々な行動を得点に換算して評価する形式だったが、「重要な人事をゲームのように扱うことは言語道断」と某マフィア幹部から激しいクレームにより、現在はあくまでも辞任までの期間を競う形式となっており、前述の得点換算は参考点として挙げられるに留まる。


参考点

10000P:就任後、即辞任。(※歴史上、未だ例がない)ただし、病気療養などはのぞく。


500P:所信表明に「継続」「ともに歩んでいきたい」などの単語が入る。