宇宙消失(作:グレッグ・イーガン)

  • 感想

やべー。量子論とナノテクの専門用語の嵐。読み終わるのに結局、3日ぐらいかかったのは俺っちの読書史上初めて。
 雰囲気としてはサイバーパンクなんだろうけど、サイバーパンクサイバーパンクって言われる感覚の部分(ギブスンやディックが見せるような読者を幻惑するイメージの嵐)をそのまんま、高密度の専門用語に置き換えている。
 結果として、専門的な知識を持たないおれっちのような読者にとっては、恐ろしく分かりにくいSFに仕上がったように感じる。
 まるで哲学書か理科の教則本
 しかし、単なる哲学書や理科教則と違って、この作品のタチが悪いことには、内容が面白いのだ。
 特にサスペンスに見られるような登場人物が常に命にさらされているという緊張感をナノテクと可能世界論で演出する手法はすごい。そして中盤から後半にかけて、全ての情報のピースがそろいアクロバティックなストーリィ展開を見せるところなんかは食い入るように読んでしまう。

 まあ、そのためか、オチがかなり弱く感じた。このへんはいかにもサイバーパンクだったので、好き嫌いが分かれるかもしれない。
 ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のオチのように、物語は「収縮」しているとはいえない点において、評価できない部分があるのは事実。