死ぬことと見つけたり(上) (著:隆慶一郎)

  • 感想

 よくも悪くもおおらかすぎます。武士社会。特に最後のエピソードは卑怯すぎますね。あそこにあれを持ってくるなんて。暴力的すぎますよ。かっこよすぎる。
 こんなことを書くと、泉下で作者がにやにや笑っているのが思い浮かびますね。人を食ったような人物だったんでしょう。なんとなく。
 葉隠の思想、つーか、武士の思想ってのは諦めが肝要であるとなにかで知った記憶があるのですが、それにしてもこの作品の登場人物が全員、「ええい、ままよ!」となげっぱなしジャーマン気味なのがたまりません。
 これか! これが隆メソッドか! 漢と書いて、ますらおと読む! 己が信じるままに生きて、それが許容される。そんな生き様。素晴らしいですね。絶対にすぐ傍に立っていて欲しくはないですが。
 でも、羨ましいなあ。武士社会。うらめしいというか。お前らがそんなにかっこいいから、せせこましい現代社会がちんけに感じられるんだよ! どうしてくれる!? どう責任とってくれるんだ。もうお嫁にいけないわっ! 絶望したっ!


 ……まあ、あれですよね。作者のいわんとする「いくさ人」思想ってのは、間違いなく当時でも大迷惑だったんでしょうね。我侭になれねぇやつに戦道は切り開けねぇんだ、ってなもんで。
そいやロックスミスもハチマキのおとーちゃんもプラネテス世界における大問題児だったナァ。
人の業凄まじき。
いや、でも、どうなんだろう? 「死ぬことと〓」のほうは佐賀武士のやりかたを周囲もわりかし笑って許してるけどな。
と考えると、やはり武士社会が総体として、「いくさ人」を受け入れる土壌があったのだろうか、異常を異常としながらも、その有効性がある限りは受け入れる。
 でも、これは何時の社会でもそうだろうし。じゃあ、何が異常なのかってなるけども、それは多分、時代背景によりけりなんだろうな。後は程度の問題か。
 武士社会は連綿と現代社会にも根付いてるんだよっっ・・・!!