魔女の宅急便 紅の豚 風の谷のナウシカ もののけ姫を見る。

  • 感想

 上記四作はいずれも何度も見ている作品群でして、この間から機会あって数度見直していたのですが、やはりおもしろい。スタジオジブリの中でこの四作品はいずれも傑作だと思います。となりのトトロ平成狸合戦ぽんぽこは都会人(中でも特にリベラリスト)の自然に対する感情が露骨に見えており、田舎者の自分には全く魅力が無い作品で、千と千尋の神隠しは、宮崎駿オールスターズで、デジタルの使い方もさほど魅力的ではなかったので、この四作品が作品のクオリティが突出しているように思われます。


以下、思いついたことを羅列。

  • 魔女の宅急便
    • 宮崎駿監督の上手さというものは、幻想と現実を融合させる按配が絶妙だという点だなと痛感した作品。
    • 原作を読んでないので、一概にいえないが、キキが魔力を失い、魔力そのものは戻ってもジジと最後まで話すことはなくなったのは、つまり初潮(肉体的にも精神的にも)を迎えた、ということなのだろうと思う。
  • 紅の豚
    • 出てくるキャラが背伸びをしていない作品。
    • 物語や背景を背負ったキャラクタが自分の役割を完全に担っているためキャラが自らのドグマに従っていて絶対に無茶をしない、行動原理から逸脱して暴れない、という意味では面白みは少ないのだけど、不思議なものでなぜか非常に好き。もののけの次に好き。
    • 最後でポルコの魔法が解けたのは、フィオのキスとはなんら関係なく(キスで魔法が解けるのは単に作劇としての帰結の意味にすぎない)、ようやくジーナの気持ちに向き合うつもりになったからだと思う。豚になったのも、自身の親友にして恋敵であったジーナの伴侶を失った時からだと考えれば、まあまあ妥当だろうと自画自賛
  • 風の谷のナウシカ
    • 自然保護を完全な幻想世界(徹底的にプロップからあらゆるリアリティを排除している点を見てもそれは明らか)に仮託した作品で、漫画版にある「人間性」を完全に排除して(出てくるキャラがまったく成長しない、クシャナの心理の変遷にもまったく説得力がない等)、明らかにテーマのみをスポイルした作品。
    • オーディオコメンタリで庵野秀明監督がなにかにつけて口走っているように、今、見ると技術的に相当足らない点も多い。
    • が、やはり、それを補ってあまるだけのパッションと努力がにじみ出ているのがいい。止め絵の使い方が上手い。バランスがとれている。
  • もののけ姫
    • 自然と人間の在り方についてようやく相対的な視点が付与された作品。
    • それまで良くも悪くもガキズムに満ちていた宮崎駿監督が精神的に完全に大人になってしまったためであろうと思われる。
    • もしくはテーマの深層に死生観が関わっているためか、あるいは監督自身の自然と人間に関する一連の思考様式が完全に分離したためなのか、まあ、いずれにしても作品からははっきりと分からない。
    • イザナキとイザナミの関係である主人公二人の別れで幕を閉じると同時にヒトとカミとが分かたれた新世界が始まるという暗喩がなによりおもしろい。
    • 製作者の世界観がすさまじく冷酷で、ヘタな慰めやおためごかしが一切ないのがとてもいい。死と生が前面に出ているのがはっきり分かる。
    • 主人公以外の本職でない声優の力量が時々足らないのが目立つのが残念。
    • これがジブリ作品の中ではなぜか一番好き。その理由が全く分からないのが、自分でも不思議。