NHK「立花隆が探るサイボーグの衝撃 」について


 押井守が出ていたので、録画して見ました。

 以下、一緒に見ていた知り合いとの会話を抜粋。

 
義体って言葉を作ったのは押井守ではない」
「つーか、攻殻機動隊は漫画が原作だってことを完璧にシカトしてるよな」
「このへん誰か、ゼミ生でもいいから彼に指摘してやらなかったのか」
「なぜそこまで士郎正宗を避けるんだろ……」
「多分、SF小説ニューウェーブ辺りから言及していくのがめんどくさかったんじゃね?」
「SFとか謳っといてそれかよ……」
「『脳を活かす研究会』なんだから、せめてここは瀬名秀明だよなあ」
「多分、瀬名秀明を持ってきても『脳みそがミトコンドリアと誤解される』とか高度に政治的な判断があったんだって」
「やっぱりねー、SFはベストセラーになっちゃいかんよね。革新的なイメージ作っちゃうと、全部それに引っ張られるし」
「脳の可塑性についてもっと知りたいなあ。これが自意識問題の要でしょ」
「ちょっと要約しすぎてるよな。この人の著作とか探そうっと」
「つーか、全然まったく攻殻機動隊かんけーねーし」
押井守にもっと喋らせろよー。イノセンスの特典CDで喋った人間機械論はもういいからさ。もっと違うネタを! オレに押井分を補充してくれ」
「うわ……ねずみ爆弾だよ」
「ダーパおっかねぇ……やっぱ毛唐の連中は発想力が違うわ」
「お? お? お?」
「おおお? これはもしかして」
「キターーーーーーーー!!」
「パワードスーツ! パワードスーツ出たこれ!」
「わはは! 超強そう」
「わははは! 米軍マジやべーって。マシナーズプラトゥーンとかが絶対いるって」
「日本の介護スーツのデザインが限りなくアニメっぽいのはどうにかならんのか」
「なんかさー流線型つーか節々が貝っぽいよね」
「あの光ってる渦巻きとかとれそうだ。ウソップが空気とか衝撃とか溜めてそう」
「わはは」
「げ……記憶が解析されてチップに収まるんだって」
「海馬チップ、おっかねぇ」
「海馬コーポレーション?」
「それ『海馬』違いだから」
「いや、でもあそこのマッドな会社なら、チップ作ってそうだよな。海馬の人格を移植したチップを埋め込まれて、社員皆海馬とか」
「最悪の会社だな」
加速器でた」
「立て、立つんだジョーーー!」
「今度は『ジョー』違いだ」
「アクセルアクセルアクセル! チャーグル!」
「ヴィクトリーム様かよ」
「つーかさ、これでもし若本規夫になれたらおもろいよな。おめー、マジ胸トキメキ、だぜ?」
「何その八十年代ヤンキーセンスな台詞は?」
「いや、なんとなく」
「つーか、それって『マルコヴィッチの穴』じゃん」
「あれも自意識の問題だったよな」
「マルコヴィッチ?」
「マルコヴィッチ」

 などと。


 とりあえず押井守との対談が全然かみ合ってないのに笑った。
「人間はすでにサイボーグなんですよ」と、しょっぱなから企画のコンセプトを全否定する押井守*1と、
義体って言葉はどこから持ってきたんですか?」なんて原作者を100パー、シカトして話を進める立花隆に爆笑。
 また軍事ネタを振られてものすごく喋りたそうにしている押井守、「『義体』ってオレが言い出したんじゃないのに……」といかにも言葉を選んで、話を逸らそうと努力する彼にマジ萌えでした。


 特集内容自体はいまひとつだったなあ。もっとサイボーグの話をしてほしかったのに。
 科学技術における倫理云々とか兵器転用の危険とか、誰にだって想像がつく分かりきったことだし。
 しかも、それならそれで突っ込んだ話に入ってくれれば嬉しいのに、立花隆はどこまでも傍観者のスタンスを崩さずにいて、単に「兵器にされちゃうと危険っすよねー」ってそんなんガンダムで何十年も前に通過したネタじゃん。 
 全体的にブレイン・マシン・インタフェースにおいて、人間側のインタフェース(倫理観とか)をピックアップしすぎ。それだけで三分の一以上使ってた気がする。
 確かにインターフェース問題はそれに携わる人々にとって重視されなければならないとは思うけど*2、それはあくまで携わる人間の問題であって、新しい知見を得ようとする視聴者の問題ではないよなあ、と思った。

 実際、オレがこの番組に期待していたのは、ブレインとマシンについて、もしくはハード面でのインタフェースについてだったわけだし。その点では、確かにインターネットを介して行われるテレイグジスタンスなんかは衝撃的だったけど、もっと詳細が見たいよー。
 SFって銘打つんだから、そのへんもっと見せろよー。それとも本買えってんのか。ケビン・ワーウィックの「I,CYBORG」を取り寄せろつーのかよ。めんどくせーなーもう。英文読むのしんどいんだよー。それともそのうち出版される立花隆の本でも買えってのかー。それだったらもう、それ専門の入門書でも買うよー。


 全体を通して見て、ものすごく不思議に思ったのは、立花隆はわりかし無邪気にサイボーグ技術を喜んでいて、とにかく楽しそうなんだけど、それってどういうことなんだろうということだった。
 サイボーグというフランケンシュタイン化を促す技術について軍事利用の是非を問いかけてくるような番組構成が目立って見えたんだけど、それでも取材風景としてはすごく楽しそうにしてる。このちぐはぐさがものすごく気になった。


 後、イノセンスやゴーストインザシェルの映像がたびたび挿入されるんだけど、ナレーションの理解度が目に見えて微妙(サイボーグの自意識とか前述した義体についてとか押井守攻殻の原作者扱いだったりとか)なので、映像が入るたびになんかむずかゆくなった。
「チッガーウヨー、ゼンゼンチッガウゥー」って外人風カタコトで突込みを入れたくてしかたがなかった。


 それから、「SFが現実のものに」って、もう今となっちゃ意外でもなんでもないフレーズだよなー。と今回で改めて思った。

*1:実際のところの発言の真意としては、機械と人間の身体性や自意識の違いってのはそんなに出ないんだよ、ということが言いたかったんだと思う

*2:例えば、いわゆるクオリア問題とかね