知り合いらとグダグダと話する。


「思うんだけど、歴史小説家ってのは偉大なる同人作家なわけですよね」
「その発想は危険すぎるから、やめてくだちい。冥府魔道へ一直線だぞ!」
「え? なんで?」
「そんなん言い出したら、『甲賀忍法帖ロミオとジュリエットの同人小説、ただし、それぞれ自殺するんじゃなくて、刺し違える』とか『Mr.インクレディブルウォッチメンファンタスティック・フォーの同人映画。ただし、サイドキックが黒幕なのはバットマンシリーズの影響』とか」
「違う違う。そんなのは作品に対する単なるイチャモン。「すべての作品は先人のそれの模倣である」なんて女の腐ったような物言いを分かったようなツラでぶらさげて悦に浸ってるだけ。そうじゃなくて、隆慶一は柳生攻めとか」
「あの、あなたの言われるところの「受け」と「攻め」の基準は何なの?」
「キャラに対する愛情と偏見の比率で変わる。だいたい、愛情:偏見=5:5で良識的な歴史小説家、佐藤賢一とか」
「それよりも、歴史小説家を構成する要件が偏見と愛情だけしかないというあなたの発想が恐ろしいんですが…えっと、じゃあ、人修羅・アラヤマ*1は?」
「朝鮮総受け。比率は1:9」
「え? 意外な数値」
「あのセンセイはねー、多分、朝鮮半島に起こったこれまでの経緯と韓国人のメンタリティの何もかもを理解したうえで、あんなことを書いてるんだと思うんだよね。だから、やれ反韓だなんだと右に左に関係なくわめく輩には、ものすごく高度な理論武装で待ち構えている。『あなた、小説のことなんて真に受けてるの? バカじゃないの?』とか実にごもっともな反論でずんばらりと切って落とす用意ができてるっぽい。だから、偏見は少なめ」
吉川英治
「武将総受け。比率は4:6。基本的に優しい日本人としてメインキャラを美化して書く傾向が強いし、そういったキャラを普通に愛してる。ただし、史実から引っ張ってくるってより、元々の講談師としての資質がそうさせるのか、即興でおもしろおかしくしてしまう気がするから偏見部分も加味した」
塩野七生
「ローマ総攻め。比率は8:2」
「え? またしてもわかんねー」
「あのひとはねー、とりあえずローマが好きすぎて、完全に目が眩んでる。親バカの境地というか、ものすごく高度な腐女子
「それはお前の偏見だろ」
「そうかな。カエサルが好きすぎて、オスカルにしか見えないんだけど」
「本気で基準が分かりません」


 などと。

*1:荒山徹のこと。歴史と妄想の間を彷徨う様は、ボルテクス界トウキョウを放浪する「真・女神転生3NOCTURNE」の主人公の呼び名こそ相応しい