ライフハッカー

 ある男と男が酒など飲みながら話すのである。
「つまるところ、最終的にSNSが個人的スケジュールを発信するようになったとき、ライフハックは完了するのです」
「それってSF的にか?」
「SF的にです」
ライフハックとは人格のコントロールではないのだよな?」
「違いますが、そうともいえます。ライフハックの達成は生きがいを奪うことにあります。SNSは今後、冷蔵庫2.0の如き個人的生活=ライフのメモ書きに向かっていくでしょう」
「それは願望だね?」
「願望です。であるからこそのSF的なのです」
「なるほど。そもそもライフハックとは何をすることでライフハックなのかね?」
ライフハックは、ある人が書いた予定を先取りして実行することで達成されます」
「・・・それだけかね?」
「定義としてはそれだけです」
「効果は?」
「スケジュールの実行を先取りされることはイヤなものです。例えば、読みたかった本を先に読んで感想を書きます。あるいは、不二家のシュークリームを買ったとします。書かれたスケジュールを次々と実行していきます。予定は予定ではなくすでに過去となり、かくして異なる人格は一つになり、恐怖描写が冴え渡るのです」
「それは・・・SFだな」
「SFです」
「しかし、無数に穴があるな。ありすぎるといっていい」
「願望ですから」
「オチはない?」
「思いつきですから」
 そうして男と男とはまた杯を交わすのである。