ガガガ文庫 雑感。

  • あらすじ

 国内大手組織「小学館」若頭「名前は知らない」の謀略により、侵すべからずの「沈黙の掟(オメルタ)」は破られた。
 すなわち、タカモノ(ライトノベル業界)への参入である。
 本来ならば、タカモノの仕切りは、富士見、電撃、スニーカーを中核としたシノギであったはずである。この仁義なき「名前は知らない」の振る舞いに対し、「小学館」会長「これも知らない」は激怒し、即座に己が背徳の腹心を呼び出した。
「ワレぁ、タカモンはのぅ、角川はんのシノギや、それをお前、なんちゅぅことやってしもうたんや。いかんのぅ、まったくいかん。仁義ものぅで、ワレ、渡世やってけるぅ思うとんのかぁ?」
 しかし、この恫喝にも恐れた様子も泣く、若頭は不敵に笑うのだった。
「会長、いけませんなぁ、そいつはいけませんわ。ワシら、もう我慢ならんのですわ。
 確かに仁義、これは大事ですわな。しかしねえ、角川さんトコばっか美味い汁すすって、これまでずーーっと来とりました。
 つんでれ、やの、めーど、やの、ハクイもんばーっか、扱いよって、ホンドバでおたく転がしや。ワシら、スソでちんまい商売させられとるだけで、えろぅ肩身狭うおました。
 ……そろそろええんちゃいますか?
 ワシら、天下の小学館でっせ? おたく云う生き物、もしかしたら角川さんより知り尽くしとるちゃいますか?」
「せやさかい云うても、ワレなぁ、世の中、そんなんばっかやっとったら、いずれ共倒れや。
 考えてみい。今回のワシら引き金になってしもうて、『ほなワテもワテも』云う連中出てきてしもうたら、どないす? あっちもこっちも雨後の筍になったら、シノギ削りあうやろうが?」
 なだめるような調子。鬼の会長も老いたか。もはや我慢ならぬ、とばかりに若頭、おもむろに立ち上がって、
「もうええですわ。ここからはワシがやりますよって、会長、どうぞ身ぃ引いたってください」
「おどれぇ、何ぬかしとんじゃ!?」
 しかし、不敵なる若頭、笑って振り返り、
「もうええぞ、お邪魔させてもらいぃ」
 背後の障子、開かれて、それまで控えてたものどもが現れる。
「お前らぁ!?」
 会長、その驚愕の顔。そこに立ち並ぶのは、
「ウブカタぁ、お前か、お前が賢しらな口、まくしたてて、このアホゥ、ええ気にさせよったんか?」
「それにタナカぁ、お前もかぁ、日陰におることに飽きよったか? さっさと穴倉に帰ればええものを。それにナカムラ、フカミ、貴様らぁ」
 後は声にもならず、ただ立ち並ぶ恐るべき鉄砲玉を見上げるばかりである。
 ようやく裏切りの明白となった若頭に怒気を含んだ視線を浴びせるが、やがて、ほぅ、と息を漏らし、
「……もう、ええわい。やりたいようにやってみぃ、ワレがコケよったら大笑いしたるわ! そん代わり、エンコ置いていけや
「喜んで落とし前つけさせてもらいます、そのくらい弁えとりますゆえ」
 

 かくして今宵、仁義なき戦いが幕をあける。
 ライトノベル業界に吹き荒れる嵐。行き着く先は、生か死か。
 

(続く)