情報型ヒーロー メモ 2回目


 動機設定の困難。

 少年漫画的な、いわゆる「いっちょ世界とか救ったるぜ」系の動機付けは非常に弱くなった。無効ではないが、フィクションとしていまいちリアリティにかけている。世界は一人ないし少数の力では負い切れないという認識。近年でもっとも真摯に「ジュブナイルバトルモノ」をやってみせた「武装錬金」も主人公カズキが守るべきものはせいぜい彼の所属するコミュニティ程度である。その延長線上に薄く世界中があるだけにすぎない。
 情報型ヒーローはこの「世界の全景の消失と個人の前景の現出」を前提にする。
 つまり、情報型ヒーローの動機付けの多くとして使われるのがギャンブル:金銭を介したバトルであるのはそれが動機付けとして現在、極めて有効だからである。
 この正反対の角度から、同じヒーローの動機付けを行っているのが、バットマンのようなビジランテ(自警団)ヒーローである。ビジタンテは多くは個人の資質によった犯罪の撲滅を目指すため、どうしても対手については慎重にならざるをえず、結果、情報を取得して対策をたてることを目指すことが多い。(※向こう見ずであるという描写も多いので、ビジランテは情報型ヒーローのカテゴリに組み込むのはむずかしいか?

 多くは変態であったり、異常性格者であることがしばしば示唆されている。報酬を求めないスタンスは例えば、Fate/stay nightの主人公やHUNTER×HUNTERの主人公などに見られるが、彼らは周囲から明らかに歪なモノとして描かれていることが多い。「正しいこと」に対する動物的な反応は「(いわゆる「正しさ」を快楽原則とする)ロボットとしての正義行使者」であり、これも現代ヒーローに横たわる発想であるように感じられるが、今はおいておこう。
 
 嘘喰いと賭郎、ONE OUTSの渡久地とオーナー

 情報型ヒーローをテーマにする作品では、しばしば厳粛なルールが存在する。 分かりやすい例でいえば、やはり「DEATHNOTE」であるが、デスノートのルール付けは超自然的なものに守られている。そのため、メタゲームにはなりにくい。展開されるのはあくまでもルールをバックにした人間模様である。(このため、夜神月を情報型ヒーローとよぶのはややシビアとなるか?
 情報型ヒーローで真実、問題になるのは、ルールそのもののコントロールをどうするか? である。
 ONEOUTSなどは本来なら、守るべきルールをしばしば変えてしまう。
 ルール破りがなぜ問題となるか、というと「ルールの崩壊」を導くことで、まったく異なる位相のルールが立ち現れるからである。場をコントロールするというのは、相当なカタルシスとなる。
 強固なルールの前の風景というのは、デスノートがそうであるように実はものすごい混とんだからである。
 そこに新たな秩序をもたらせることが、情報型ヒーローの最終局面である。
 嘘喰いはその点で、実に興味深いサンプル。主人公は物語が始まる以前に、すでにルールによって敗れていることから始まっている。賭郎倶楽部はプレイヤーを裁定するジャッジであり、ルールそのものである。
 そして、嘘喰いはこの賭郎倶楽部を破ることを目的としている。すると、見えてくる嘘喰いの物語とは「ルールを改変するストーリィ」である。

 ※課題:ルール変更を最大のカタルシスと求める場合、強固なルールで縛られたデスノートや情報戦であるスポーツ物などをどのように解釈するか? ギャンブルに囚われすぎなのかもしれない。別物と分けるべきか? 要・改正。