[30分粗書] 趣旨

  
 最近、体調不良が続いており、色々モチベーションがダウンしており、従って書く意欲も落ちているのでこれはいかんなと思い、ちょっとやり方を変えてみて、書くことを習慣化する方向で持っていきたい。

お題は、「テン・レスト」という未完成物をやり直し。
大筋としては、スーパーマン的な少年とジョーカー的な少女が出逢ってぶつかって、殺し合ったりラブくなったりするハイな話。

いいセンまで行っているけど、いまいちおもしろくならないものを色々、文体とか視点とかギミックとかキャラとかの切り口を変えていじくってみる。
 
以下、開始。


「テン・レスト」 初稿/変奏1


 
 僕の名前は大見智是。十九歳で、人の死ぬことを何より恐れる。
 この年になって6月、ある日、ふっと気づいたことがある。
 僕は姉貴に並んだのだと。すなわち、彼女は今はもう亡い姉のことで、十九歳の時に死んで、そのとき僕は十六歳だった。三年前まで、僕は姉貴より三つも年下だったのだ。追いつけない人にまず一つ、追いついたという事実には、少し驚きがある。
 姉貴は美人といえば美人だったが、それより男勝りでおっかなかった。弱きものは好きではなかったけど、それよりふんぞりかえっているやつが大嫌いで、怒鳴るしか能のないと評判のバレー部顧問を殴って退部になり、スカートの丈一センチの長い短いでいちいち小うるさい教頭を殴って停学になり、クラスでニタニタタニタいじめを喜ぶバカを殴って学内抗争を巻き起こしたりしていた。そんなときの動機はいつも、
「いい気になっているヤツが許せないねえ。ソファに背もたれてふんぞりかえってこっち眺めてるヤツはなおさらだ」
 有り体に言って、気質、発想、行動すべてがパーフェクトに番長であり、だから彼女を知る人も周囲には少なからず、どころか相当数いて、彼女の葬式には本当に、本当に多くの人たちがやってきたのだ。彼女は人に影響を与えることのできた人物で、だから、彼女は僕の中で生きている、完全に、ではなく、不完全に。あるいは、彼女が関わった人たちの中でもいくらかそうなのかもしれない。
 一つだけ言えることは、姉貴は確実にすごい人だったのだ。何の力も持ち合わせなかったのだけど、人並みの、それよりは腕っ節と気っ風のいい十九歳までの生涯だったけど、彼女なりの全力で世の中に応対した。
 どうしてそこまでしたのか、今時流行らないそのスタイルの大元はなんだったのかは僕は知らない。同じように、父と母も知らないだろう。父は中堅商社の万年係長で、母は市立病院の看護士だ。姉貴のような、或いは、僕のような存在が身内に現れるべき人たちではない。
 それでも僕も彼女も疑いもなく彼らの子供で、いつだったか僕が凹みまくっていた時に、父が鷹揚に笑って、彼女が鮮烈に逝った後、その葬式で思い切り泣いた後と同じように笑って、「えてしてそういうオヤの所に、突然変異みたいな子供が現れるんだ」元・ロック少年だった父が言った。「何の変哲もない平らな所からすごく突出した存在がね、いきなり現れるんだ。そういうのジーニアスっていうか。分かるだろ?」なんとなく意味は理解できた。「オレは全然いいと思うな。香屋子もお前も、お前らなりのド真ん中に生きてるんだろ? だったら、全然アリじゃないか。お前らこそオレの、俺たちの子供たちだよ。なあ?」 すると、母は、パンクな父をたしなめるように、「そうねぇ……。とにかくトモがやりたいことやって、それで無事なら、まあ、いいわ」と、すっかり増えた皺をもっと増やすように少し心配、少し呆れたようにして、それでも微笑むのだ。