「トランスフォーマ−・リベンジ」を見たよ。

IMAX川崎にて。

公開日が14日までだと知ったのが今日だったので、あわてて仕事を切り上げて急ぎ足で向かう。前作はBLU-RAYで視聴済み。(超かっこいいけど、寝る。超かっこいいけど、目と頭が痛くなる。超かっこいいけど、何やってるか分からないなどの事前情報により最近まで見てなかったのだ)

開始早々、大学生になる主人公サムとバンブルビー、両親、彼女の関係についてざっくりおさらい。
この辺りが物語のしっぽに対するフックであり、中盤以降ほぼ完全にオミットされるドラマを綺麗に着地させるよう、ハリウッド映画として如才ないところを見せつける。
ま、ドラマなんてのはどうでもよろしく、後は一気呵成に流しきる「戦力投射ゲーム」の幕開けである。

 ロボット、変形、ミリタリ、破壊、エロ、グロ、下ネタ。

 こんだけ大ヒットしているのに、要素を並べてみると意外なほどニッチな筋だと思う。もっとも、似たような内容を手がけているエヴァンゲリオンもヒットしているので、高品質なニッチはロングテールを生むんだよ! とマーケティングで誰かぶち上げてくれそうではある。
 
 劇中の破壊規模や演出ではエヴァが遙かに軍配があがる(なんせ対象が「蒸発」するのだ。破壊どころの騒ぎではない)わけだけども、トランスフォーマーが諸々の欠点(特に方々で言われている寄りすぎカメラ、テレビで見る分にはそんなに気にならなかったが、劇場で見るとなにやってるかマジわからん)を補ってあまりあるほどになにが素晴らしいかというと、でけえロボットが変形して高架をすりつぶす(マジで!)、ついでに車を挽き潰す!(ひでえ!) そして、VSマジ軍隊、飛び散る泥、火花、コンクリ、岩、金属、あと人間! 吹っ飛ぶ建造物、文化なんてくそくらえ! いいからB-1爆撃機飛ばせ! 爆弾もってこい! 雨だ! 雨を降らせ! 地面を吹き上げるぐらいの一心不乱の爆弾雨だ! 
 そしたら、爆発、爆発、爆発。その破壊が投射される対象のこれらすべて現実に所与として存在するものであり、IMAXの超高画質画面上で、アニメじゃないほんとのことが起こっているわけである。正直、映画を見て、口をあんぐりしてしまった。初経験である。我にかえった瞬間、なぜか思った。「正直、すまんかった」と。

 んで、エヴァトランスフォーマー、マスプロダクションとしての「破壊」を詰め込みまくって、すさまじい映像物量に到達しているこの二作品にピタっとハマる言葉をid:FUKAMACHIさんが見事に放った。(http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20090711
 天使映画である。


 制作者はもはや自らで統御できないほどの欲望を、欲「望」ではなく欲「動」と変え、フル投入した結果、もはや人類の想像力の地平線で神とのブリッジを築いている。何の神との間に? なんだろう。分からん。暴力の神か。神は万物に宿るわけだし、こと暴力に神はしょっちゅう宿っている気もする。
 エヴァ使徒)にしてもトランスフォーマーにしても、彼らは天使なのである。

 
 「トランスフォーマー・リベンジ」終盤でディセプティコンの兵隊が天から落ちてきて、横たわる聖者を破壊しようとする。救世主の復活を待つ人々の応戦。そして、選ばれしものの死と、復活。人にもキリストがいるようにロボットにもキリストがいる。二者の合一によってはじめて神との契約は成り、老いたものは若者が引き継ぐ。背教者に制裁はくだり、平和が訪れる。
 終盤、ドラマが消失して神話が顔をのぞかせる辺りもエヴァとよく似ている。人の行為は
無効化され、彼らは自らの代行者をたてざるをえなくなる。
 そして、この「行為」の媒介としての天使たちが所狭しと画面上を踊りまくる瞬間、意志の代表者であるはずの人間はただの歩き回るシミにすぎなくなる。ラッパを銃に持ち替えて、挙げ句、近接格闘戦に突入。結論:熱くなりすぎた天使のガチファイトは人を人とも思わなくなる。
 ここでエヴァはガチファイトを特定人に託してしまう*1が、トランスフォーマーは大勢でバックアップする辺りにお国柄が見えて良い。
 あと、中盤のテレビ顔さらしで、魔女狩りがはじまってもおかしくないんだけど、あんまり悲愴感がなかったりする辺りとか。ラストでも日常への回収がとくにわだかまりもなく、するりと落ち着く。
 この無頓着さ。
 さすが破産しても気にしない国だけあるぜ!
 そこで日本版トランスフォーマーがあったとしたなら、どうなるかと考えて、ちょっと暗澹たる心地になるのはイヤなものである。

*1:シンジに世界が委ねられる所もそうだが、三号機絡みの事件で、ミサトがいなくなった時のネルフ職員のあの使えなさとか