最果てのイマに関する所感。
- 作品評価
結果として、駄作。作品の狙いは分かります。
ハイパーテキスト化して、物語の多様性を探るというもの。ループものや多世界モノとはまた違うメタレベルでのアプローチは面白い。
けど、そのアプローチに必要な手段が間違っていると思いました。
事実を推論で埋めるのは、その推論に根拠、すなわち連続して蓄積された多くの事実があって成立するものであり、またその推論が事実になるのは、推理小説がそうであるように、解決編があってのことです。
この作品は、明らかにその解決編を作劇解答の説明に使ってしまっていて、作中解答の説明に使っていない。これは大きな違いです。
製作者が「こういう意図があって、こういう作品にしたんですよー!」と言っているのと変わらないですね。
それは確かに言ってもいいことですが、それを言うには、物語がちゃんと終わっていないと言ってはダメだろうと思います。
例えばそれは推理小説で、地の文の説明そのものを登場人物がやって、肝心のトリックの解説を作者が引き受けるような愚行にも等しいといえます。
もちろんそうした手法をとるのは構わないのですが、作劇の解答をキャラが引き受けて、作中の解答を作者が引き受けるという倒錯した状態を好む読者はほとんどいないでしょう。
しかも、この作品の場合は、肝心要の作中の解答すら放棄してしまっています。
とても高い評価をすることはできません。
なにより、僕がこの作品にあって、致命的なほど頭に来ているのは、
「パズル化した物語、ピース化したエピソードで埋めていく」作業が明らかに不可能になっている点です。
そもそもピースが足らないパズルなんて完成しないっつーの。時間感覚が消失してようがなんだろうが、情報そのものは蓄積されるんだろうが! だったら、事実はあるはずだろうが! それともなんだ? そのピースは君の中にある! とでも言いたいんか? 推論で事実を埋めろと? ふざけんなボケェ! 誰も彼もがそんなことをするわけねえだろうが! 不完全にもほどがある! だいたい、なん――
(503, Service Unavailable)
――失礼しました。まあ、とにかく、この作品は不完全ですね。
まるでRSSのメモだとか、はてなダイアリなどで見られる個人的なメモを見ているようでした。
また、あれらは無料だから、どれほど不完全であっても別段なにかを思うこともないのですが、僕はこの作品には、少なからずの出費(8000円以上)を強いられています。
つまり僕は、田中ロミオ、Xuseというブランドに金を払っているわけです。
それをこうも踏みにじられると……
っざけんなよ……なんで無編集の作品をこっちが見なくちゃいけねんだよ! 記述者には整合性は必要ないから? まあ、そりゃそうだよな、当然だ。記述者にはハナから情報が関連づけられていて、望めば創発が可能だもんな。知るべき情報を知ったうえで敷衍が可能だもんな! しかし、こっちにはできねえ話だって。知らされるべき情報がそもそもにおいてないんだから、ムリな相談だ! そもそも、なん――
(503, Service Unavailable)
- 事実の整理などを適当に
時系列など(うろおぼえ)
1 王ユニットの破棄決定、ユニットと千鳥弟すりかえ。
2 すりかえられた忍、施設での生活
3 あずさと遭遇。M物質をディスクロージャー。感染、洗脳。友に。秘密基地を獲得。
4 任務を携え、千鳥とともに施設から外部へ。任務内容は、偽装ではクローズドの監視ないし勧誘。実際は、ユニットにおける世界(聖域)の定義化。守るべきものの発見のためと適応放散のためか?。
5斎、葉子と遭遇、友に。門倉崩壊前後。
6ほぼ同時期に、沙耶伽と関係を持つ。自然王を隷属化。章二とも友情を得る。六人で秘密基地へ。忍、人格の獲得?
7さらにその前後に笛子(姉)と遭遇? 笛子(妹)の秘密基地への案内?
8秘密基地は聖域へと
9それぞれのエピソード(一週目)。
10施設に帰還。敵との闘争。高次情報体(イマ)との過度のアクセスにより、腫瘍が顕在化。
11戦争。終結後、役割を終えた忍は聖域へ戻る。
12それぞれのエピソード(二週目)。
13エピローグ
やっぱり、おおまかな流れは書けてもちゃんと整地できそうにない・・・・グラフにしてもいいけど、チェックめんどいし……
以下、疑問点だとかツッコミどころなどをずらずらと羅列
- 宗多死にすぎ。ていうか、殺されすぎ。お前はうっかり天膳さまか! お前がTPOをわきまえず死にまくるせいでだいぶ色々ややこしいんだよ。まったく。
- 宗多に関しては色々疑問が多いですね。
- 多分、幼少時にサヤカに一回殺されて再生(もしかしたら殺されてなかったか?)。性懲りも無く、忍に喧嘩売って、斎と章二とにシバかれて、バイバイグッバイ。アンダウォータに潜って、そのうち浮上。忍をなんとか一回、殺すも、忍、再生。その間に性懲りも無くサヤカ狙って、またも殺され、生き返らさせられるという、なんだか書いているだけで笑いがこみあげてくるほど華麗な戦績を残してますね。合掌……
- 章二が再会したときになぜか彼のことを忘れていたりとか、アジって忍を殺させた笛子は誰なのか? とか、門倉傘下に入ってなにやってたんだ? とか色々不都合が多い人です。合掌……
- 笛子のくだりは、もう謎が多すぎて放置します。形而上の問題について考えると、不可知論よろしく精神衛生的によろしくないですしね。ムシムシ。
- イマは多分、自我をもった高次情報体、つまりイマジナリ・ネットそのもの(要するにある段階に至った知性体の許へ送られる上部構造からのアプローチ)だと思われるのですが、実際のトコ、これも当て推量なので、不明です。
- ていうか、戦争編と各エピソードの落差はもはや凶器です。日常、猟奇殺人と続いて世界の存亡をかけた戦い、というのはあまりに飛躍しすぎていて、本気で笑い死ぬかと思いました。
- code-Tって結局、何だろうね? 人間を並列化してメディアそのものにするってことであってんだろーか。多分、CODE-Tへのアクセス権限の獲得がイマとの接触の引き金になってると思うんだけど、これも当て推量。
- 503エラーに関しても、よく分からない。あのエンドだと明らかに、個別ルートになっていて、普通に考えてお茶会エンドには結びつかない気がする。ていうか、ここも情報不足。過程がないのよ。過程が。結果だけ読んだって、プレイヤーはちーっとも面白くないんすよ。神林長平も言っているように「なにを書くか? じゃなくて、どう書くか?」なんだからさ。
- ミームが万能すぎて、笑う。機能がまったくナノマシンじゃん。その微生物の性質やらなんやら書いているけど、なぜそれが生じたのかが漠然としか書かれていないので、せいぜいナノマシンの代替物にすぎないなあと思う。
- 未来予知が実はなかったというのは、いくらなんでも叙述トリックすぎるだろうと思う。MMR的というか……フリだけすごくて、オチが「ええっ!? そんなアホな」というか。別にいいけど、これだと葉子の未来人のくだりは全然イミないっすよね。
- ジーンは一体、なにやってたんだ? これも不明。単に間がもたなくて出したはいいものの、使いどころがなくて、そのまま放置プレイという扱いすぎる。