Under the rose (著:船戸明理)(1〓3巻まで)

  • あらすじ

 ヴィクトリア調のイギリスには、森の中にひっそりと佇む広大な屋敷がある。ロウナンド伯爵邸宅。その人柄から子を愛し、女に産ませることを好んだ伯爵には八人の息子がいる……同胞ではないがゆえに、それぞれの確執をもつ息子達を中心として屋敷では様々な姦計が渦巻いていた……

  • 感想とか

 この作品は前作の「Hory rose」の頃からずっと注目していたのですが、なかなか単行本が出なくて、半ば忘れてました。
 ところが先日、たまたま立ち寄った本屋の棚に三巻まで並んでいたので、ちょっと悩んでからやはり全巻購入してしまいました。
 この作品を端的に表す言葉は「背徳の館」かあるいは「秘め事」ではないでしょうか。


 もっとも背徳の館と聞いて、鬼畜系のエロゲーか官能小説を想定したり、秘め事と聞いて性交渉を思い浮かべたりする人はただちにゴーホームです。
 この作品はあくまで精神的な諍い、というか閉鎖環境における人間関係の陰惨さを浮き彫りにしています。陰影に富んだ背景と硬質な筆致で描かれる人物は全員、買わんでもいいぐらいのトラウマを抱えていて、そのトラウマゆえに「来訪者」を精神的なボコにします。
 恐ろしいですね。
 雰囲気としては同時代を描いた「エマ(森薫)」に近いんですが、もっとドロドロしてます。エマはその表題からして主人公のメイドさんがなんだかんだでハッピーエンドになることが予想できるんですが、この作品は「家の中にいるモノ」はともかく、そこを訪れた「来訪者」は致命的なダメージを受けざるをえないような世界でして、最初の来訪者である少年は「家族」になることでなんとかハッピーエンドを迎えたのですが、今の来訪者である家庭教師はどんなメに逢うのか、まったく想像がつきません。
 一年に一巻ぐらいしか出ない作品なんで、本当はもっと巻数重ねてから読みたかったんですが、知り合いに「アンダーザローズ今どうなってんの?」って送ったら、返信が「笑えない すごい 事態」だったので思わず購入してしまいました。