狼と香辛料(著:支倉 凍砂)を読む。

 久々に読むライトノベル。面白かったです。しっかりネタフリして、展開して、閉じる。教科書のような作品。無難なツクリでなにより読みやすかった。


 抹殺されようとするマイノリティの神さまと根無し草の商人の物語。
 剣を振ったりだとか魔法をぶっ放すだとかはしない。実直な「現実的」ファンタジー作品。風俗の扱いが舞台説明に比べて軽いので、いまいち中世って感じは薄かったんですが、雰囲気は抜群でした。
 主人公が商人なので、実際に戦ったりするわけじゃなくて、相手との戦いは銭ショーバイ、経済バトルになるですが、ネタとして素朴すぎて、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
 良くも悪くも証券バトルがここまで浸透してしまった現代日本では、作中の出し抜きあいはいまいちフィクションの大仕掛けとして軽い感じがしました。
 まあ、この作品のキモは別なので、まったく問題ないんですが。
 で、キモですが、ヒロインのホロです。
 彼女が実に可愛らしい。書かれている挙動の一個一個がいちいちツボに入るんですよね。獣耳美少女・萌え。個人的には「白詰草話」のエマ以来。
 挿絵は非常に有効に働いている好例だと思いました。


 そういえば、さらっとキリスト教の異教排斥期をネタにしているので、それがタイムリーだなー、と読んでて笑いました。しばらくこういう「虐げられたものの回復」「報われないもののシステムへの挑戦」というのは流行しそうな気がします。
 まあ、確かに「誇りある敗者」ってのはそれだけでドラマチックだからなあ。