宇宙への帰還(SFアンソロジー)を読む。


 昨日、仕事が終わってから足を運んだブコフで偶然、発見する。収録作の一つである佐藤大輔の「晴れた日はイーグルに乗って」がずっと読みたかったので、これ幸いにと購入。


 内容はSFアンソロジーなんだけど、正直いまいちだという感想はぬぐいきれなかった。
 例えば、「星喰い鬼」なんかは、ストーリーラインはすごくおもしろいのに、淡々と書きすぎじゃないかなーとか。これって、むしろファーストコンタクトモノにして、終盤の展開で「鬼殺し」をするくだりをガンガン盛り上げていったらすげーおもしろかったんじゃないかと思うんだけどなー。


 あ、目的の「晴れた日はイーグルに乗って」は大満足です。
 セルフパロディの嵐でゲラゲラ笑いながら読みました。佐藤大輔えげつねー、とか思いながら。
 

 後、この単行本に収録された「輝ける閉じた未来」がデビューの早狩武志ってどっかで聞いた名前だなーと思ってぐぐるセンセイに尋ねてみたら……
 ……あ! 「群青の空を越えて」のシナリオライターじゃん!
 このひと元々、SF畑のひとだったのかー。ていうか、劇中で書かれている社会への視線がまんま「群青」と同じでびっくりした。なんつーか、「社会に迎合するために、若者がなにかを捨てなきゃいけない」プロセスを書こうとするというか。
 まあ、なんというか、ざっくばらんに言ってしまうと、「オトナは汚い」とか無批判に言いすぎ。
 七年前の作品なので、その辺り、どうしても古臭く感じてしまいました。個人的には、「オトナって生き物が汚いことなんてとっくに分かってるから、それよりこいつらをどう出し抜いてやるか?」といったスタンスが好きなので、ちょっと合わなかった。
 後、これは致命的だなー、と思ったのが、SFとしてのガジェットとテーマが明らかに「意識とはなにか?」に向いているのにも関わらず、やってることがジュブナイルラブロマンスということで、内容が全然まったくSFじゃありません。
 これはハードなSFマニア辺りが読んだら、絶対に怒り狂いそう。しかも、デビュー作だからなあ。
 デビュー作って、そのジャンルに対する気負いみたいなものを周囲に見せたほうが微笑ましく見てくれますからね。「ああ、こいつは(ジャンル愛好家にとって)無害なやつだ」って警戒心をといてくれるわけで。
 そのへん、どの分野でもジャンル批評家ってのはうるさいわけで、当時の評価がどうだったのか気になります。
 まあ、要するにそれぐらいSFからかけ離れてたってことです。SFアンソロジーでこれやっちゃうとヤバイだろとなんか読んでてひやひやしました。
 まあ、それと書き口を含めて、かなりライトノベルっぽかったってことです。*1

 他の作品は、まあ、谷甲州とか森岡浩之とか、名前を出せばだいたいどんな作品を書いてそうか、なんとなく想像がつくと思いますし、内容自体も予想を超えてくるものではありませんでした。短編にしては全体的にキレが悪かったかな、と感じました。



 


 

*1:この場合のライトノベルとは、物語ではなく、装置として他メディアからアイディアを引用してくるメディアのこと