web取り置きが届いたので、『g.neo』(ファック文芸部)を読む。


 世の中には確実にどうしようもない人間が少しずついて、そのどうしようもない人間というのは、根っからどうしようもないわけでは決してなく、人物を構成する部品の大部分はいたくマトモなんですが、ある一般人からすれば見えにくい部分が異常に肥大化していたり、収縮していたりするわけです。フィクション世界で一時、大流行したサイコさんなどがそれに該当します。そして、この同人誌を作った集団、ファック文芸部もまた該当します。
 そして、そんなグループが何をするか、といえば、
 書くんですよ。小説を。


 以下、ざっくり個別感想文。

  • 夢の逆十字
    • 二人称小説。ヘンな話。妙なデジャブがあるなーと考えてみれば、アレだ。ジブリの実験アニメだ。チャゲアスの歌で、リバースとプレイが何重にも張り巡らせた話。つまり、そういう話。輪廻、恐るべき。
  • まじかるゾンビー フラン
    • 多分、一等マジメなストーリー小説。かなりライトノベルで、作者は賞に送っていた経験もあるようで、長編かなにかストーリーラインをアレンジメントした短編っぽい気がする。そのためか、キャラクタの背景がずいぶん希薄なのが残念。世界観のズレからくるユーモラスな描写とオチは好き。
  • ピグマリオンのしもべ
    • マイベスト。アンドロイドの目的を「ユーザーの理想的なヒトに似ること」に設定した結果、何が起こるのか? というロジカルな小品。当然、これはヌルいエロゲーなんかじゃありませんからエライことになります。必然ですね。素晴らしい。
  • 無駄な酒は落ちない。
    • スラスラ読める。こう、なんというか白湯のような作品というか、好きなんだけど感想がでてこない。すっと入って、すっと溶けて消えるような印象。
  • 小説『DEATH NOTE』
    • ものすごく冷たい手触り。ぞっとするほど鋭い刃に触ったような気分。
    • ほとんど虚無といってもいいほど自動機械的なキャラクタのやりとりが描かれ続けるんですが、「目的のための充足」が下地にあるため、肉厚でもある。キャラ造形が単なる空疎で留まっていないのが素晴らしい。
    • 作者の理想とする人間像って、古川日出男の超人思想と近いと思った。ただし、あくまでも目的を完遂するための意志力が問題になっている分、結果が重視されないのが面白い。


後半分は多分、明後日。