『g.neo』感想・後半戦。


 時間ないからサクサクいくよー。来週までに2006年度オレ・フィクションランキングもやるからねー。

  • 「you copy?/i copy」「超光速通信」
    • いいショートショートです。グッサリ鋭くて、しつこくない味わい。素晴らしい殺意の量です。
    • 「不二子先生をいかに墓から引きずり出して、ゾンビ化し、再び殺すか?」という命題は現代に生きるウソツキどもの宿業ですが、それにしてもいい角度ですね。バードマン=アメリカ人と読み替えると、色んな意味で味わい深い。これが21世紀の民主主義のなれのはてだ!
  • 「密室に死の痕跡あり」
    • 収録作品のなかではファック文芸という目的にもっとも特化している作品だと思う。
    • その分、感想が非常に出にくい。強いて言えば、「まあ、アンチノックス?」「そうだねー、アンチノックスだよね」
    • あんまりどうだこうだ言う感じじゃない。とにかくアンチノックス。ええい、ファ文の瞬発力は化物か!?(シャアの声で)
  • 「バール、金、銀」
    • あとがきには魔術的リアリズムに影響されている、とあるけど、時代的にはもう少し進んだ場所にいるような気がしました(もしくはボルヘス風)。不条理が解体された先というか、大きな物語が不在となっていて、目の前の狂った日常が連綿と建築されていく過程を眺める作品というか。好きな作品なんだけど、個人的にはもう少しディテールがあると嬉しかったかなあ。金、銀、バールに至るくだりで、突如として描写の細部が失われるのが気になったので。
  • 「愛しき女に永遠の別れ」
    • ものすごく安部公房。正当なるシュルレアリズム。縦書きで読んでて一番、愉快でした。
    • これを、歪んだ現実認識=女性の死を受け入れらないでいる男の右往左往と捉えれば、話はこのうえなくスッキリする。女性を葬る決意をする手前で、合わせ鏡の男が現れて、主人公の死姦に対する嫌悪が表明されるところなどからそれは読み取れる。多分、死んだ女性は仲間由紀恵似だったんだろう、という話。
  • 甘焦
    • 初手から「私、今からウソをつきます!」と表明する作品にウソをつかれるキモチがわかる!?
    • なんかもう、古川日出男ですよね。明らかに。「ある小道具の提示→そのプロップにまつわる逸話を展開し、内包された大きな物語を敷衍→と、いう話だったのさ」というフルカワ節の自覚的なパロディ。これは書いてて、楽しかったんだろうなー。作者の自意識の波に攫われていく感じがいいです。

 

    • 全体感想。

 収録されているのが、SFとシュルレアリズムしかほとんど存在しない、というのが面白い。(もしかしたら、「違う!」とそれぞれ作者さんから言われてしまうかもしれませんが)
 おおむね重合した現実が繰り広げられるのは、ここで書いてる人たちが皆、「フィクションは所詮、フィクションでウソだよ」というスタンスをとっているからだろう。
 そして、その冷めた視点が当事者のものとして置き換わった瞬間、「ウソなりに現実を構築する」作風に変異する。
 であるがゆえに、作者たちが、高い論理性と奇想の複合が求められるSFやシュルレアリズムにたどり着くのは必然のことであり、そこからそれぞれ異なった様相を持つ物語を展開させるのが、このアンソロジーの醍醐味だと思った。