「時砂の王」(著:小川一水) を読む。

 激燃え。
 血が踊りまくり。
 「謎の侵略者による人類滅亡を回避すべく、時間をさかのぼって人類を守るロボット」とだけ書くとベタですが、ガジェットがことごとくツボ。
 具体的にいうと、喋る剣と冷たい無慈悲なシステムの女王。時間線=戦線の概念、拮抗線としての時間的最終防衛線。積極的な歴史干渉が新たな兵力に。人の思いを敷衍して全体の奉仕となす知性体。物語が時間の分岐を超えて伝わる。官僚主義は時間も場所も問わずにガッデム。
 よいではないかよいではないか。 
 
 構成も見事で、主人公オーヴァルがなぜ強いのか? どうしてそう動く? そういった疑問を説明するのではなく、「時間SF」という枠組みで答えてみせる。そのための二軸(客観的な過去→主観的なさらなる過去→客観過去)が折り重なったストーリィもは構造的にものすごく強度が高くて、終盤になると「これマジでどうやって収めるんだ?」という不安感が漂いはじめるのに、見事にそこを跳躍してみせる。素晴らしい。
 そろそろ小川一水も全巻読破しないといけないのかもしれないなぁ。