色々と読んだ。買った。

 
 この三週間ほど所用につき、朝から夕方まで往復三時間ぐらい電車に乗っているのですが、当然のように小説と漫画を鞄につめこんで、一日2冊ぐらいのペースで本を読んでます。
 もはや仕事のために電車に乗っているのか読書のためなのかすら不明の領域に突入しつつあるのですが、読んだものの感想羅列。

 単行本の話をしようか、という矢先から未収録部分の話をするとアレなんですが、ヤングアニマルで現在進行中の章で語られた「衛兵隊の隠された役目」がすごくグッときました。まさに「女王陛下の〜」。これだから、めくるめく伝奇ワールドは止められない。
 やっぱり面白いなあ。歴史モノの喜びとは、思わせぶりに出てくる登場人物たちの行く末を我々はあらかじめ知ることができるということです。オクタウィアがどうなるのか? ザビーナねえさんはどうするのか? ネロとアグリッピナは? 
 一方で、彼ら演ずる輝かしい歴史の表舞台から語られぬ歴史の闇のなかに生きる拳闘士たちと衛兵隊。
 光とは闇あってこそ際立つのですよ。

 グダグダになったりすることもあるけど、元気な漫画です。ジューン・メイがすごい。このキャラだけで、倉田英之はDVDを買って、生きていけるんじゃないだろうか。

 なんだこの傑作。
 「BLUE DROP」をアニメ化してる場合じゃないだろ。スタジオ4℃でただちに劇場アニメ化しないと。
 異常なほどの一コマの美しさ。
 庵野秀明あたりが喜んで書いてくれそうな背景が主役なんですが、これがグリグリ動くのが見れたら、さぞ幸せになれる気がします。

 バカSF。すべてがキッチュな舞台設定のなか、虐殺器官の物語が始まります。バベルの伝承をモチーフにして描かれる言語的テロの話は「へー」とか頷きつつ、全編に渡って繰り広げられるしょーもない展開に大笑い。
 そうだ、ピザを食べよう。

 いいなぁ。このポップな絵柄とコマ運び。一巻目はストーリィがすごく目を引いたのだけど、二巻中盤からの師弟関係を中心にした展開がいい。熱い。それでいて、一歩引いたところからの物の見方が監督/観客視点で面白い。今年のベストの一角になりそう。

 いやー、美しいなぁ。まず文章が美しい。目からボロボロ鱗が剥がれ落ちるぐらい美しい。
 前作「グラン・ヴァカンス」ってSFの枠組みで語るよりも、マルキド・サド/澁澤龍彦の著作のような倒錯を現代風な装いでアレンジメントして陳列した文学作品(ビジュアル的には陽光に満たされた「イノセンス」を思い浮かべていた)と感じたのだけど、この短編集ではその裏側に隠されたSF設定をこれでもか、というぐらい並べている。お気に入りは「魔述師」。空を飛ぶ鯨と少年、そして幾ばくかの寂寥の物語。
 ところで、次回作の「空の園丁」って始まる前から「電脳コイル」かアニマトリックス中の「ビヨンド」のようなビジュアルを想定しているんですが、実際、どうなるんでしょうね。

 なんというか、こう、グルグルと頭のなかを旋回する蝶々がいましてですね。その姿を思い描くと、眩暈がしてくるような小説なんですよ。多分、全編に渡ってウソチクで構成されている(アーカムとか出てくるし)んでしょうけど、ウソをウソと見抜くにも、大量のウソがめまぐるしく配置されているせいで、どこから検証していけばいいのか分からないのです。ゲシュタルト崩壊寸前でスキップするような小説でした。その辺りも実にカルティック。 

 怒濤のラスト200ページのために、500ページ、歯を食いしばって読みました。もう、ほんとねー、前半が苦痛なんですよ。露悪的な青春小説で、かつキャラ萌えも目指してるから。
 若書きといえば、そうなんでしょうけど、だから、ミステリって嫌いさ。本格とか変格とか最初に言い出したのは誰なのかしら。
 でも、ラスト200ページはスゴイ。本当に面白い。このテンションで序盤から走ってくれたら、マジで絶賛してたと思います。「ジャンル区分:ミステリ」がかえって足かせになってしまったような作品。とりあえず、二作目も買ったので、様子見です。