「タフの箱舟」(著:ジョージ・R・R・マーティン)を読む。『ゼーガペインビジュアルファンブック』を買った。

  • タフの箱舟(全二巻)

 ひさしぶりに『ワイルド・カード』を読み直していて、ふとGRRマーティン・ブームが到来したので読みました。
 
 煽り文句通り、「宇宙一あこぎな商人」ハヴィランド・タフの活躍を描く短編連作集。
 
 あ、やべ。鼻血でそう。なんだこれ、なんでこんな面白いの?
 とにかくこの作品は主人公タフの魅力に尽きる。人情に弱いと思えば、冷酷。打算と方程式のみで動くかと思えば慈愛に突き動かされる。虚栄心に耽溺するかと思えば、実直。目的のために手段を選ばないかにみえて、そうでもない。
 複雑な二面性と怪奇なる気まぐれ癖。これは、十年に渡って散発的に披露されたシリーズだったので、キャラが何度かぶれていることにも由来するのですが、タフの底知れぬ「何者か(=劇中では『禍が神』と表現されていますが」っぷりに深みをかえって与えているように思えました。
 そして、タフだけでなく、出てくるクライアントも興味深い。特に最終章となる「鋼鉄のウィドゥ」三部作に出てくるクライアントたちは、先進国にとりまく問題が端的に表れたかたちになっていて、SFがもっとも先鋭化した形で現代を切り抜きうることの証左となっています。そして、その題材、テーマ、語りともにまったく色あせない。というか、読み終えてからこれが十年以上前の作品だと初めて知って驚きました。


 後、日本語訳が非常に工夫されているように思えて、読みやすかったことも好感度が高い。
 ヤバイなぁ。こんな面白いとなると、ずっと我慢してきた「炎と氷の歌」シリーズにも手が伸びてしまいそうじゃないか。


 買った。読んだ。
 内容はムック本だから、まあ、こんなもんか、ぐらいの満足。
 巻末の設定用語集とメカデザイン、キャラ設定画に2700円の価値を認められるなら、悪くないアイテム。
 しかし、ロボットアニメでクオリアデカルトの劇場という単語を聞くことになるとはなぁ、となんだか感慨深いものがありました(決してバカにしてるわけでなく)*1
 特にデカルトの劇場は、言われて見ると確かに、作中で劇場のイメージが何度も登場するのは、ここから来てたのかーと得心。そういや、シズノって劇場世界に顔を出してたっけ? 被写体だったことは何度かあるんだけど、ないとしたら、『心』=観客ではなかった、ということにもなるわけで。


 後、『ラストサパー』のレストランメニューがなんでイタリア料理なのかが気になった。10代の男女が行くならフランス料理よりもまだ気楽な分だけ足を運びやすいという意味でのリアリティ*2なのか、単純に「最後の晩餐」→イタリアという連想ゲームなのか。まあ、別にどうでもいい話か。最終巻ももうすぐだなあ。
 
 









  
 


 

*1:ハードプロブレムなんてめんどくさいものを『イノセンス』とは違う論法で辿っていけるんだ、という驚き

*2:萌え系のコスチュームで給仕してリアリティもへったくれもあるのか、という疑問はさておき