スーパーオタク対戦?


 「涼宮ハルヒの憂鬱」は青春モノか?

 この疑問に対して、ぼくは大きく見て、二つの感想を持っています。

「頭いいッスね。マジで」
「ちげーよ。バーカ」


 とりあえず、ハルヒを青春モノだって言っているのは、見た感じ二種類います。
 1、頭のいい批評家。
 2、熱心なファン。

 1と2はしばしば対立してます。もしくは、お互いの言説が気になって仕方がない。
 1の論旨をオレ要約。


 ハルヒは逃避の物語である。コミュニケーションの喪失がテーマである。原作者と京アニは、オタクいじりがお上手ね。


 2の論旨をオレ要約。


 ○○萌え、オレもワタシもこんな世界に旅立ちたい。


 オレ判定、どっちも死ね。

 
 つーかねー、なにがむかつくかというと、この二つともね。全然、相手の話を聞く気が見られないんですよね。それでいて、お互いがお互い、正しいことを振りかざすから、オレみたいな「どっちでもいいよ、つーか、アニメおもしれーよね」人間はたまんないんですよね。
 なんでこうギスギスしてる世界の狭間に追い込まれるの? 声がでかいものの勝ちですか? うん? 世の中、言ったもん勝ちですか?
 ふざけんなよ、てめーら、うぜー権利主張団体か? もうねー、ほんと心が痛くなるんすよ。 
 ヒトの話ちっとも聞かねー連中のやりとり見るのってダリーんだよ。
 だから、オレの結論は、こう。
「ア゛−−−−−−−−! もう、お前ら殴り合えよ! ガチで気が済むまで殺しあえ!」

 
 
 まあ、今の状況を分かりやすくいうと、お互いくるっと半回転して背中を向けて、メンチ切り合ってるようにしか見えないんだよね。ダッセーーーーーー! バカっ! お前ら、どこ見て、キバってんだよ! 傍から見てると爆笑モンだぜーーーーー!


 だから、アレだよ。今から殴り合えって! はい、赤コーナー、史上最強の頭でっかちー、ヘリクツ言わせたら一級品。オタクイズデーッド! 青コーナー、ムテキの脊髄反射。リクツは不要、萌えたら一途! ダイナマイト・リビドーーーー!



「解説は、サブカルチャー中道派師範『ビューティフルドリーマー・シゲ』さんに実況はわたくし、『ヌルオタ・タカ』が行わせていただきます。シゲさん、本日はよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
「今日の対戦ですけども、萌えオタク対サブカルということですが、どういった試合運びになることが予想されますか」
「そうですねー、まず、デッドの立ち回りですね。やはり正面からぶつかってはいけませんからしっかりと足を使って、迂遠な論理展開で幻惑すると」
「やはりリビドーの一撃が危険、と?」
「はい。特に最近の萌えオタクは『空気嫁』を覚えましたからね。これは強いですよ」
「ほほぉ、つまり、ファンコミュニティで皆がわいわい楽しんでいるところに、水を差すような長文はやめろ、といっているわけですか」
「その通りです。『空気読め』は、つまり、相手のコミュニケーション能力を問うているんですね。こうした優越感ゲームになるとサブカルは反応しないわけにはいきませんから、飛び込んでしまう。危険ですねー、これは」
「なるほどー……さあ、この世紀の一戦。デッド、リビドー、共に目をあわそうとしません」
「当然ですね。ここで相手を見てしまうと、コミュニケーションが始まってしまう。いけませんね。あくまでも彼らの言葉は、それぞれのファンコミュニティに届くものですから」
「まさにアンタッチャブル。危険な情事がっ、今っ、始まりました。
 さあ、まずはお互い、距離をとる」
「様子見ですね。ほとんど本能的な」
「リビドーが取り出したのは、その名に相応しい。おおっとエロ同人だ! これはさっそく危険だ! なんと! ズボンを脱ぎ始めたぞ! これはやばーーい! 放送倫理コードに完全に抵触している! 会場からは怒濤の「エモい」「キモイ」コールだああああ! さあ! しかし、彼のゴッドハンドが今! スポットライトをうけて輝きま――! おおっと、ここですかさず、サブカルが『ユリイカ・チョップ』ーーー! 危険です。自意識過剰な文字の羅列が萌えオタの脳天に直撃だーーー! これは効いた! 萌えオタが目を瞑る。しかし、そこでさらに『サリンジャー・ハイキック』が炸裂。こめかみがぐらりだああ!」
「いいコンビネーションですね。この後、『澁澤・四谷ワンツー』に行きたいところですが、萌えオタの中には悪魔辞典やドルフィー属性を持つ人間がいますから、要注意です」
「うおおおっと、リビドーがクリンチ。細かくパンチを当てていく。『お前も萌えてんだろ?』『じゃあ、なにが楽しくてアニメなんて見てんの?』これはキく! デッドは防御するばかりだ」
「対策不足ですねー。理論武装していないオタクなんていませんよ。サブカルの慢心ですねー」
「その通り、この萌えオタはただの萌えオタではないぞ。さあ、ここから膝だ! 膝! 膝が出たぞ!」
「萌えオタはその主張が萌え一辺倒ですから、バリエーションが乏しいぶん、一撃が重いですね。『せめてフィクションでぐらい現実逃避させてくれよ・ニー』は実感が篭っているから余計にです。彼らの多くは、打たれ弱い反面、一度、反撃に出ると強いですよ」
「おや? どうした、ダイナマイト・リビドー、マットに倒れたぞ? 苦悶の表情。なにがあった。――あ、ここで審判が入ります。……ああっと! オタクイズデッド……ロー・ブロー! ローブロー宣言! 股間に直撃してしまった『萌えキャラなんて現実にいないんだよ! ショートアッパー』。それを言ってはおしまいだ! 怒り狂ったセコンドが飛び出して、飛び膝蹴りだーー! 『アニメを小難しいリクツで語るのも一緒だろうが、ジャンピングニー』。さすがに、ラムちゃんに萌えて、押井守ビューティフルドリーマーに激怒した世代だ。年季が違う! たまらずサブカルがもんどりうって、倒れた。場内は騒然! しかし、声を張り上げるだけで誰も飛び出さない!」
「やはり、誰だって実害をこうむりたくはありませんからね。賢明な判断です」
「何も言わないことが勝利! 勝者はリングにはいなかったーーーー!」